-めがねの業界通 矢野 翔太(ヤノ ショウタ)の苦悩-
翌日。学校へ向かおうとアパートを出たトージの前にヨシアキが飛び出した。どうやら、待っていたらしい。
「トージ。おっはよ」
「お、おはよう。びっくりした」
「寮から一本通学路を外れると、ここに出るんだ!一緒に行こうよ」
眩しい日光の下、改めて見る憧れの元選手は言った。戸惑いながらも、待っていてくれたことに対してお礼をすると、ヨシアキは「まあね!」と元気良く返事をした。
それにしても、野球からの逃避のために入った学校で出来た初の友達が、嘗ての凄腕一塁手であるヨシアキになろうとは。皮肉なことだ、と嘆く暇もないほど純粋に嬉しかった。こうして、ヨシアキと普通に話しているということだって、まだ実感という形で受け入れることができない。
昨日、話そうと思ったことは何だっただろうか。緊張して思い出せない。トージがまごまごしているうちに、またもヨシアキが会話の口火を切った。
「あ、そうだ。昨日トージと別れてから、すっごいこと聞いちゃったんだ」
「え、なんの?」
半分聞いていなかったので、慌てて聞き返す。
「あのさ、オレたちが中二くらいの年からだっけ。そのあたりから、オレたちみたくテレビなんかで騒がれた奴が多くなったの覚えてる?」
「あぁ。えっと、そうだったような」
思い返しながら、確かに、と納得した。あれは、トージたちが中学三年生になる半年ほど前だったろうか。
突発的に「スーパージュニア」などというフレーズが生まれ、流行語大賞にも入選したのだ。あらゆる分野で将来有望とされる少年少女たちを指す言葉で、そういった子供を紹介・検証する番組が増えに増えた。
例えば将棋で名人を完全に破ってしまった小学生や、最年少の気象予報士。
同様に少年野球やサッカーも取り上げられた。
特に逸脱した能力を持つ選手が台頭した時期だから、年齢にそぐわぬ速球を投げる投手やプロ顔負けの長打を連発する中学生などが扱われた。
その中でも特にトップクラスの実力を持つ選手として注目を浴びた者こそが、野球強豪校が挙って欲しがり、プロのスカウトが様子を見にやって来るようなトージやヨシアキだったというわけだ。
「本当、急に注目されたよな。それで忙しくて、連絡もとれなくなったスポ少仲間が何人もいたし」
と呟きながら、トージはヨシアキの謂わんとすることがわからずに難しい顔をしていたようだ。
ヨシアキはニヤニヤしながら続けた。
「S校のオウキくんって知ってる?ほら、ショートとかセカンド辺りを守ってた、角縁眼鏡の」
記憶を深く辿らなくとも、ヨシアキの言う男の、冷静な顔はすぐに思い浮かんだ。もちろん覚えている。
オウキ タスク。広い守備範囲と、伸びる送球が特徴の内野手だった男だ。
「ああ、カクブチ王子な」
思い出すと同時に、人気が出たスポーツ選手がだいたい通る「異名」が脳裏をよぎってつい笑う。ハンカチだのなんとか姫だの、誰もがスポーツニュースで目にしたことがあるだろう。
そんな中、御たぶんに漏れず彼が付けられてしまった、恥ずかしい異名。
それが「トリックスター角縁王子」である。
トージは激しく同情してその異名を聞いた記憶がある。確かに彼のプレーはトリッキーだったし、角縁の眼鏡は目立った。だからと言って、要素を全て詰めればよいというものではない。
「で、そのオウキくんがどう……え?まさか」
トージは、ヨシアキの浮かべる不気味な笑みと含みのある物言いでやっと理解できた気がした。嫌な予感、というか良い予感、というべきか。
ヨシアキの言うように「凄いこと」と言おうか。
ここまで来れば、もうわかるだろう。
「そうだよ、オウキくんもここに入ってたんだ!オレ、入学式では君の名前しか頭になかったから聞き逃したんだろうけど。でもいたんだ」
酷く興奮している。それはそうだろう。トージのように、頭がついていかずに無反応でいる方が余程おかしい。
「しかも、それだけじゃないんだぜ。まだまだざっくりいたんだ、すごい選手たち」
まだまだいるだって?
愈々こんがらがったトージは、眉間に皺が寄り、顔も歪むくらい必死に理解しようと頑張った。
ところがヨシアキはお構い無しに話を続け、その結果わかったことは、なんと前年にも、嘗て注目されていたトップクラスの選手が隠れて入学していたという――、とんでもない情報であった。つまり、現在の二年生に。
あまりの事にトージの魂は、そのままどこかへ漂って行ってしまいそうだ。
その上、三人もいるのだというから恐ろしい。
「まずは、マリヤマ リンタロウ。超自然的投手」
端正な顔と細い体からは想像がつかない程の重い球を投げる豪腕ピッチャーだ。色素の薄い肌と、頬骨の上のそばかすが特徴的で、見た目だけで言うならば野球などしそうにないホンワカ系統であった。
マイペース故に度々常人の予測し得ない答えを返してインタビュアーを閉口させていた記憶がある。
「次にツバキ ヨウスケ。顔怖かったよね」
その通りだ。ギラリと鋭い眼、きつい表情が印象深い選手であった。打撃はバント職人にして技巧派。守備にまわれば、顔に跳ねる「ミドルバウンド」を得意としてアウトを量産する。
基本の積み上げに重きを置き、手を抜くということが何より嫌いだというストイックな精神の持ち主であり、良くも悪くも存在感のある二塁手だった。
「で、最後にミナヅキ ルイ。通称破壊神」
ヨシアキと同じく、一塁手だった。考えることが苦手らしいが、守備打撃ともに球への反射はズバ抜けている。元気にダイヤモンドを跳ね駆け回る姿は、守備で多くの走者を混乱に陥れて、また攻撃では相手の守備をも翻弄した。
偶々なのか態となのかまでは判別できかねるのだが、兎に角、守備の穴を付くバッティングをする選手だった。
つまり、昨年はこの三人が入学し、そして今年トージ・ヨシアキ・オウキの三人が入学したと言うことは。
もう駄目だ。理解できない。
「ホントに、ドリームチームができるよね」
ドリームチーム。聞いたトージは萎縮してしまった。
何故してまた、こんな高校を選んでしまったのだろう。ここへ来て良かったなどと、始めのうちは呑気に思っていたが、ここまで揃うと不気味でしかない。この学校のことを調べたときにはそのような情報はなかったのに。
「なあ、その先輩たちも野球をやめてきたのかな」
理由まで同じだとしたら、笑ってしまう。
「そうみたいだよ。理由はオレたちと近いって」
笑うどころか背筋が凍った。話ができすぎている。
そう思うトージは、心配しすぎなのだろうか。
するとヨシアキは、ミナヅキさんだけはちょっと違うみたいだけど、と呟いた。
「違うって、入学した理由が?」
「うん。あの人は、ホントは野球続けたかったんだって。けど頭が悪すぎて『いくら野球ができてもこれは無理』って感じで面接を落とされちゃったみたい。スポーツ推薦だったのに。で、慌てて一般を受けようとしたら間違って、ここの願書と取り違えて出しちゃって」
意味不明である。
頭が悪すぎてスポーツ推薦を落とされた?
まさか意思の疎通が出来ないレベルなのではないか。プレー自体は非の打ち所がないというのに、頭脳だけを理由に入学のチャンスを逃してしまうだなんて。
それに、間違ってここを受験するという事態も理解に苦しむ。そもそも野球を続けたい人間が、野球部がない学校の願書などを取り寄せるわけがない筈なのだが。
何故取り違えるのだ。
トージは頭を抱えたくなった。
「そんなに……なんと言うのか、大雑把な頭脳の持ち主だってんなら、どうしてここ受けて合格できたのかな」
一応ここ臥柳高校は、パッとはしないものの学力的にそこそこ悪くはない学校なのである。
トージだってこの高校へ入ると決めてから猛勉強をし、偏差値を五も上げてギリギリラインで滑り込んだくらいなのだから。するとヨシアキは、ヘラヘラと笑いながら説明してくれた。
「ここ私立で、二次試験もマークシートだったじゃん。あの人、全部あてずっぽマークして受かったらしいよ」
本当ならばとんでもない強運の持ち主である。番号を振った六角鉛筆や消しゴムを転がすより、ある意味では潔いと言えるかもしれない。
しかし手遅れである。トージの中で出来上がっていた「格好いいミナヅキ」像は音を立てて崩れ落ちていくのだった。勉強が苦手だとは前から聞き知っていたけれど、まさか面接の無難な会話ができないという意味で“苦手”だったとは思わなかった。
「ショックだ、ミナヅキさんがそんな残念だったなんて」
「そんなに予想外だったかな?一昨年のインタビュー映像も結構めちゃくちゃだったけどな」
それはそうだが、てっきりエキセントリックを演じてファンサービスしているものだとばかり思っていたのだ。
スポーツドリンクと間違えて、油が分離するタイプのドレッシングを持ってきてしまった、というハプニング映像は見た覚えがあるが、今思えばあの有り得ないミスも本気でとぼけてやってしまったものなのかもしれない。
「というよりヨシアキ、なんでそんなに知ってんだよ」
トージは混乱半分呆れ半分で、ヨシアキに疑問の矛先を向けた。こいつサバサバした顔をして意外と野次馬か。と思いきや、ヨシアキは涼しい顔をしている。
「実はね、オレが仕入れたネタじゃないんだよ。一緒のクラスに情報通の友達がいて。いや、通よりマニアと言うべきかな?とにかく凄い奴なんだよ。一緒の寮に住んでて、出るとき一緒だったから、きっとそろそろ追いついて来ると思うんだけど」
そう言うとヨシアキはトージの肩越しに振り返って、嬉しそうに顔を輝かせると「あ、来た」と呟き、大きく手を振った。つられて振り返ると、細身で背の高めな、気弱そうな青年が駆け寄ってきていた。
洒落た銀の眼鏡を上げながら、彼はただただトージを緊張気味に凝視している。
「日曜大工の苦手そうな優しいお父さん」という表現が似合うだろうか。
彼がやってくると、ヨシアキは彼の肩に手を置いた。
「オレから紹介するよ、トージ。この人は、ヤノくんといって君のファン。オレは一年前から友達なんだよ」
成る程、元々の知り合いか。ヨシアキの紹介に応えて、ヤノは慌てて何度もこちらに頭を下げた。
「どうも、始めまして、ヤノ ショウタです」
声が上ずっているので、つられて慌ててしまった。
「あ、えっと、コマノです。その、ありがとう」
ファンという久々の響きに少し戸惑っていると、ヤノは妙に礼儀正しく背筋を伸ばした。
「僕、この世代の選手で言ったら、コマノくんのことを一番格好いいと思ってました。深い守備位置からの、ホームへの返球。レーザー返球。近くで見たらもう、波動砲かって思うくらいに迫力があった」
波動砲は言いすぎだ。そんなものを撃てば体が粉々になってしまう――などとくそ真面目に返すのよりも先に、トージは「近くで見たら」という、気になるフレーズに反応してしまった。
「もしかして、試合を見に来てくれたことがあるの?」
「当然ですよ。僕は、自分の目で見て判断したいタイプなので。レーザーを見られて幸せでした」
目を輝かせ強く言い切った後でヤノは一旦黙り、生唾を飲み込んだ。
「でも、その。話はヨシアキくんから聞きました」
それまで興奮していたヤノだったが、トージの置かれた立場を思い出して留まったようだ。
しかし実を言うとトージは熱く語ってもらったことで、辛い思い出が吹き飛ぶくらい嬉しかったのだ。
「野球、やめちゃうんですよね」
ヤノは言葉を選びながら、慎重にそう言った。
何と答えたらいいのかわからなくてただ頷き、うん、とだけ言った。それだけでは足りないと解ってはいたが、果たして理解されるだろうか。
ヨシアキと違い、ヤノは一人のファンだった人間だ。立場の違う「ファン」とそんな話をすることは初めてだ。それは思ったよりもずっと難しいことだった。トージは改めて、自分は面倒ごとから逃げたのだ、という、顔を背けたくなる事実を目の当たりにすることとなった。
「やめちゃうのは、とても残念です。心ない人のせいで、何故コマノくんが野球を嫌いになったり、やめなくちゃいけないんだ、と思ったら許せない」
ヤノは表情を変えない。しかし、初めて会ったトージにでも――ヤノが怒っているのがわかった。
トージのために。
「だけど、本当は、僕が怒ったらダメなんです。僕だって色々知りたがって、テレビやネットで情報を探していたという罪があるんですから。カメラを通して選手たちを追って、嫌な思いをさせていたのは、僕たちなんですから」
トージは胸を打たれる想いでその激白を聞いた。ヤノは、トージが引退したのを自分たちのせいだ、と思い込んでいるのだ。
それは違う。絶対に違う。トージが退いたのは――。
「ヤノくん」
自分が何も言わずに逃げたばかりに、楽しみにしていたヤノのようなファンを悩ませてしまった。
否、ヤノだけではない。トージのことを見守っていた人間は他にも沢山いた筈である。
己の都合だけで、会ったこともないのにトージを信じ応援してくれた人を裏切ってしまったのかもしれない。
それはただ自分が弱かったから、それだけだ。
「ヤノくん、僕、逃げたんだよ。ファンを忘れるなんてプロ目指した選手として失格だ。全然かっこよくない」
追ってくるカメラの、その向こうに誰がいるのか。
それをトージは忘れていたと認めざるを得ない。自分を責めるヤノの言葉で、やっと思い出すなんて。
「第一こんなこと君に言うのも、言い訳の延長みたいですごくかっこ悪いよ。ごめん」
思ったよりも、ずっと情けない声が出た。
今更遅いのはわかっていたが、悔しかった。しかし途方に暮れたようなトージの言葉を受け、ヤノはぶんぶんと首を振りまくるのだ。
「逃げるのは格好悪くなんかありません。悪いのは全部、僕含むデリカシーのない一般人なんですから。将来を担う選手を潰すのはいつだって過激な報道なんです。僕だってわかっていながら、結局は加担したんですよ」
頑なに、ヤノは自分が悪いと信じ込んでいる。暫く俯き次の言葉を探していたが、やがて顔をパッと上げると、トージの前に回りこんで真正面からガツンと叫んだ。
「だから、コマノくんは絶対に悪くなんてないですし、かっこいいんです!」
こんなに熱いファンコールを受けたのは、始めてである。トージはまた恥ずかしくなって、結局間の抜けたニヘッという笑い顔を作った。この胸の内を知ってか知らずか、ヨシアキもにやにやしている。
「二人とも熱苦しいなあ。どっちがゴメンナサイするかなんて話やめようよ。今は同じ学校の生徒同士だろ!普通に友達じゃあ、だめなの?」
「ヨシアキくん、これは重要な問題ですよ」
ヤノはいかにもという見た目の通り、ちょっとだけ理屈っぽくて真面目な男のようだった。一方のヨシアキは、そうかなとかわしながら笑っている。
なんとなくトージたちは平和な友人同士になれそうだと思った。
しかし、ヨシアキの奴。なかなか大雑把なまとめ方をしてくれた。
「……でも、そうだよな。折角一緒の高校なのに、変に遠慮しあうのも嫌だよな。というわけで、ヤノくん。こんな僕だけど、よろしくしていいかな」
トージは感傷的なグローブの感触が蘇る左手を差し出し言った。握手を求められたヤノは目を丸くしてトージの左手を見つめていたが、
「これが、平成のブラックホール!」
と早口で口走った。
「へっ――」
不意打ちに、トージはおかしな顔をしなかっただろうか。「平成のブラックホール」だなんて。現役時代に命名を受けた、黒歴史中の黒歴史な「異名」であった。
「やめてくれ!じんましんが出るよ」
トージは身震いしながらシャツを捲って、二の腕を確認した。じんましんは兎も角、懐かしくも恥ずかし過ぎる通り名をいきなり引き合いに出されたことで、皮膚には鳥肌が立っている。
「ご、ごめんなさい、つい」
人の気も知らず爆笑しているヨシアキは無視するとして、ヤノはどうも謎が多い人物である。
それでも気を取り直して今度こそと左手を差し出すと、ヤノは恭しく握り返した。プロ野球選手じゃあないんだから、とトージは困ってしまったが、冷たいヤノの掌を感じながらしっかり握る。
「あの、畳み掛けるように不気味な話をしますが」
ヤノは手を離してくれない。力は強いようである。
「何だろ、不気味って。ホラー?」
「いえ、そっち方面ではなく。僕、今まで野球の試合をたくさん見て来ました。選手のグローブに捕球される白球を羨ましいと思ったことさえあるんですけど」
ヤノは、不適な笑みを浮かべて眼鏡を光らせた。
「今、コマノくんと握手してちょっとだけ球の気持ちがわかったような気がして、エヘヘヘヘ」
変態だ。野球の変態である。
トージが二秒くらい何も言えないで硬直している内に、ヨシアキはまた爆笑し始めた。
「なんじゃそりゃ!オレ、こういうあっぶねーところがヤノくんのいいところだと思うよ」
その言葉に、トージは苦笑いするしかなかった。
「悔しいけど、言いたいことはわかる気がする……」
あっぶねーという表現は的を射るどころではない。
的を貫通して未知なる宇宙へ向かっている。なるほど、ただのファンとは次元が違うのだ、このヤノという男は。
ヤノは漸く手を離してくれ、それから数分はぼうっと左の掌を見詰めていた。そんなヤノを見ているうちに、トージは唐突に思い出したことがあった。
「ところで、ヤノくんが来る前、なんか大事な話をしてなかったっけ?」
そう問うとヨシアキは舌を出した。忘れてたと呟く。
「そうだそうだ、話がすっかり別の方に行っちゃったよ。さっき先輩情報話したじゃん。あれ全部、ヤノくんのリサーチなんだよ」
「ぜ、全部?」
トージは口をパカッと開けた。
入学して間もないというのにどうやってそんな情報を手に入れたというのだろう。
トージには見当もつかなかったが、同時に、それ程に情熱を傾け情報を集める野球好きが自分のファンでいてくれるなんて、と顔がほころんだ。
野球をやめた、この僕に。
「どうだ、すごいだろ」
ヨシアキはヤノの肩に手を回して、自らの偉業のように威張ったのだった。
「実はオレにこの学校教えてくれたのもヤノくんなの。何でも知ってるんだよね、すごいね」
「あ、ああ。すごいんだな」
思わずトージが呟くとヤノは大袈裟に恐縮し、凄くないです趣味ですと早口で呟いた。
「じゃあヤノくんさ。先輩たちが今、何やってるとか、そういう情報はある?」
ヨシアキはヤノを捕まえたまま、ふらふら歩いている。車通りが少ないからいいものの、危ない。
「おい、轢かれるぞ。――うん、でも確かになあ」
中学時代は注目されていた割に、高校進学後の彼らをトージは知らない。この高校で身を潜めていたからなのだろうか。だとするならトージやヨシアキがここに入学したのは正解なのかもしれない。
ここでなら平穏に暮らせるということになるのだから。
「部活とか入ってるのかなあ」
トージは、今頃トージたちと同じく校舎という目的地へ向かっているであろう三人の先輩の顔を思い浮かべた。
ここで暮らしていれば、いつかすれ違うこともあるのだろうか、と感慨に耽りながら。
- 続く -
2000-01-01
あとがきです。
通学路ながいですね。
ちょい田舎の曲がりくねったいびつな路地にある高校で、通学路が道のり3,5キロほどある設定です。
すべあ